現在では紀勢・参宮線の貨物列車といえば、亀山−新宮間（3161・3160ﾚ）紙専用貨物と多気からのダイヘン特大貨物のみとなった。
　しかし、国鉄貨物の大幅削減・再編が行われる昭和５３年以前にあってはほとんどの主要駅で貨物取り扱いが行われていた。
　国鉄の駅区分では「一般駅（旅客・貨物扱い）」と「旅客駅（旅客のみ）」と「貨物駅（貨物のみ）」からなり、今の常識では特殊駅の部類に入る客貨取扱の「一般駅」が数の上では圧倒的に多かった。
　左の時刻表は昭和５３年１０月改正後の紀勢・参宮線貨物列車だけの時刻表である。貨物列車本数も多く、取扱駅は主要駅のみならず小規模駅でも行われていた。
　これらの駅では側線に常に「ワム」や「トラ」が留置してあり、駅前には木造の日通貨物取扱事務所があったのだが、現在ではその面影もほとんどなくなってしまった。

列車が到着するとあちらこちらの駅で貨物列車がのんびり
と発車を待っていた。（高茶屋駅 T.Kataoka 1982）

貨物取扱駅には必ずと言ってもいいくらいスイッチャーが
配置されていた。昔は手押しといって貨車を職員が２人
がかりで押したりする光景もみられたが、重労働かつ危険
を伴うので動力化が進み国鉄末期にはほぼなくなっていた。

参宮線に最後まで残っていた貨物列車は亀山−宮川間の小野田セメント専用貨物である。昭和６１年１１月ダイヤ改正で廃止となった。宮川駅から参宮線に沿って専用線があり、そこにセメントピットがあった。１両のスイッチャー（ＯＤ２５）が配置されていた。

−　メモ　−＜＜専用貨物＞＞　かつて貨物輸送の大半が個々に荷主の違う様々な種類の貨車を連結していたのに対して、専用貨物はまとまった一つの荷物を専用貨車からなる編成をもって運転している。主なものとしては石油・石灰石・セメント輸送などである。現在はコンテナ貨物に移行しつつあるが、操車場を経由しない専用貨物は当初ＪＲ貨物の大黒柱のひとつだった。
　

クリックすると拡大できます→。「’８５貨物時刻表」より

−　メモ　−＜＜解結貨物＞＞
　その名称の由来は各駅に長時間停車して、該当駅着の貨車を編成途中から解放し、また該当駅発の貨車を連結することを繰り返しながら走る貨物列車のことである。
　この非効率な方法を改めようと昭和５５・５７年改正において列車あたり貨車２〜３両程度の取扱駅は大幅に縮小された。この結果、紀勢・参宮線沿線では津・阿漕・松阪・多気・山田上口・三瀬谷・紀伊長島・相賀・尾鷲・熊野市・阿田和が取扱廃止となり新宮市内の熊野路貨物駅も廃止されることになった。
昭和５９年操車場相互間の「直行貨物」と操車場から周辺駅まで解結せずに短距離を運行する「集配貨物」が登場し、ついに明治以来の「解結列車」は廃止されることになった。